幸子の庭


幸子(小学6年生)は、いじめにあって学校に行けない日が続いている。
そんなある日、九州から96歳の曾祖母(久子おばあ様)が幸子の家を訪ねてくることになった。人生最後の旅として親戚、孫、ひ孫達に会いながら……、最後に訪ねる場所が幸子の家。
そこは、75年前に久子おばあ様がお嫁入りした家で、夫(志郎曽祖父)が造りあげた200坪強の庭があるのだ。思い出の庭だ。ところが、今その庭は荒れ放題で、おばけ屋敷のようになっている。
久子おばあ様を迎えるまでに許された時間は二日間。庭を復活させるために奮闘する物語である。


この荒れた庭を剪定するのは、田坂健二という若い庭師です。他にも礼儀をわきまえたかっこいい庭師さんが登場します。木々を剪定していく木鋏の音が耳に聞こえてくるようで、剪定されていく庭とともに、読み手の心にもさわやかな風が吹き込んできます。
広い庭、家の周囲を囲む生垣、たくさんの花木が登場しますが、健二さんと幸子のやりとりを読みながら、まるで幸子の庭にいるような感覚になってきます。
たくさんの花木のことを話す健二さんに、「へえ〜、そうなんだぁ」と幸子と同じ気持ちになって聞き入っている感じです。
そして、読み終わってからというもの、私の植物を見る目が変わりました。出先で目にする街路樹も庭も、とにかく気になるようになりました。


もちろん、田坂健二といっしょに庭を見つめた二日間で、幸子も変わっていきます。