風のラヴソング

風のラヴソング(完全版) (講談社青い鳥文庫)

風のラヴソング(完全版) (講談社青い鳥文庫)

1993年に岩崎書店から出版された、越水利江子さんのデビュー作です。
未発表の一作を加えて、新たに青い鳥文庫から完全版として出版されました。

書店にならぶのを待って購入、その日のうちに読了。
でしたが、ブログの更新がひと月も遅くなってしまいましたm(_ _)m

主人公の少女小夜子の一生(半生)を八編の短編連作で描いた物語です。
幼い小夜子は、母を亡くし、父や兄と別れて母の姉にあたる伯母夫婦に引き取られます。
新しい両親をはじめとして、友達、好きな男の子…と、さまざまな新しい出会いの中で小夜子が成長していく物語です。


読み終えて……(小夜子は強いなあ)と思わずつぶやきそうになりました。
強さと言っても、「辛いことがあってもがんばる」というような強さとは違って、結果として辛いことも乗り越えていたという感じでしょうか。
その強さはどうして? 
と、考えたとき、タイトルにもある「愛」という言葉がぴたりときました。
小夜子は出会いの中で自分に向けられた「愛」を、
無意識に素直に受け止める感性を持っているように思うのです。
その「愛」が、小夜子が強く生きていけるエネルギーをくれたのだと思います。(確信してます)

私は自分の子どもの頃を思い出しました。
「なんて不幸なんだ」と自分の心の扉を閉めてしまった毎日でした。
自分で生き方を選べる日まで(それは自分で収入を得るようになる日)です。
今思うと、貴重な時間をドブに捨ててしまったようで悲しいことですが。
そうするしか無かった、子どもなんだからと自分に言い聞かせてきましたが。
「風のラヴソング」は「愛」を素直に受け入れるという生き方を、
大人の私に気づかせてくれた一冊でした。